今だから話してみよう・①

(心理カウンセラー・X氏)

「乾さん、ぜひ一緒に組んでもらいたい。 カウンセラー養成所を立ち上げる、Eさんと3人で、今がチャンスだから」

「ビジネスとして真剣にやっていきたいから協力してもらいたい」

O氏から何度かの声掛けがあった。

いずれカウンラセラーになりたいと思っていた。

しかし、まだ早いんじゃないかという私に対し、発起人O氏は

「何言ってるんですか、今しかない。  X先生・М先生が辞められる今だから、今だからこそ両先生スカウトできる。   これ逃したら、他の所を優先されてしまう」

そう、両先生 私達が通っていたカウンセラー養成所を辞め独り立ちをされる時期であった。 

2025年の今、どうかは分からないが、私達が通っていた昭和の終わり頃、その養成所は "卒業後の相談に乗る・仕事を紹介する" と、そんな嬉しいやる気を育てる文言が資料にあった。

2年ほどの養成期間も終わりを迎えようとしていた頃 同期E氏と代表者に進路相談に行った。

まぁ、ものの見事に裏切られた。

35年の時を過ぎた今、十分過ぎるくらい言われた内容が分かる。

代表の口元から吐き出され羅列された言葉の数々。

"仰る通り"

だと、身に沁みて分かる。

しかし、それなら

「2年ほどでカウンセラーになれるわけがない。 そんな甘い世界ではない」

と、入門初日に言ってもらいたかった。

結局 集客したかっただけじゃないのか、   生徒=金か、とやり切れない気持ちで一杯になった。 

日頃 沈着冷静なE氏も不快・不信感を口に出していた。

心の一部では、どこか ご尤もとお互い理解しつつも、なら あの "騙し" のような文言は如何なものかと二人して感じ言葉にしていた。

その経緯を辞める両先生に、O氏、E氏、加えて乾3人で相談に行った。

先生達も、そこは気にされていたようで、多くを語られなかったが、価値観の違いから辞める決意をされたようだった。

「心の時代」とそんなセリフがもてはやされ次から次へと生徒が受講する、そのような大人気の学校をやめ独立される先生方の勇気と覚悟も、今なら「よう やらはーった」と、胸に響くものがある。

「君たちが立ち上げるなら、喜んで協力する」

両先生の力強い返事に、3人 「よし、頑張ろ!!」と夢とやる気、大きく膨らんだ。

・ 資金はどうするのか、何処で調達するのか  

・ 各々 幾らかでも出し合うのか

・ 場所は   講師料は

・ カリキュラムは

・ 広告はどうする

・ いつ開校するのか・・・等々

1990年、

7月半ば位から3人、集まれる限り時間を作り話し合いを重ねた。

時に先生方にも加わってもらい、真っ白だった大きな紙に少しずつ色が加わっていくのが嬉しかった。

X先生には理論講座

M先生には体験講座(ボディワーク)

を担当してもらう事になり、パンフレットを発注、出来上がった物を両先生に見てもらった。

「おっ、上質の紙を選んだな。  君たちの気合が感じられる。  俺も身を引き締めんとな」 と、M先生、私達の気持ちを笑顔で包んでくれた。

が、X先生から思いもよらない言葉が。

"ウソやん、  それ 本気?"  あまりの想定外の言葉に何かで頭を殴られたような痛みを感じた。

「乾さん、悪いけど僕とM(さん)先生を一緒に並べるの止めてくれる?   Mさん○○大学出身やろ。   僕も国立大学と言ったって、たかだか○○大学やからしれてるけど、それでも○○大学と一緒にされるんやったら僕 降りるから。  他に講師探すか、Mさんに理論もやってもらって」

いやいや、そんな。

もうパンフレットも1万枚出来上がっている。

35年も前の事、自分で出来る時代ではなく、業者に頼むのが当たり前の時代だった頃、かなり高額の料金を支払った。

それをドブに捨てろ、と?    そんな、ご無体な。

これには、発起人O氏、怒りまくった。

そして、「分かった。  僕が大学教授か精神科医探してくる。   それまでは、我慢してX先生に頼もう。  嫌やけど、頭を下げよう。 その代わり他の先生が見つかったら、すぐに切ってやる。   それからそっち方面の講師呼ぶんだったら、お金もかなり払わないといけないから、それも用意しておいて」

ちょっと待って、ちょっと待って。

まずはM先生に相談してから。

M先生、豪快に笑って、

「俺は何でも大丈夫。 大学名消せと言われたら消すし、心配せんでも俺とX先生の関係はそんな事で壊れへんから。    俺は月1回、彼は毎週だから、君達が彼を優先してくれても全く異論はない。   それでも彼が納得しなかったら俺は身を引くから。」

そして、再度パンフレットを練り直しX先生にも納得してもらい、

【〜心もっと自由に〜  乾 眞澄リラクセリングルーム】 の前身であるTAC、始動する運びとなった。

しかし、素人3人、なかなか開校までにモタモタするばかり。

それにX先生、業を煮やしたのか、

「君達、いつからスタートするの?   僕もスケジュール調整しないといけないから早く決めてくれないと。  もうこんな立派な事務所 構えて、ハッキリ言って羨ましいよ。   僕 マックでバイトしようかなって思ってるくらいやのに」 焦りの声を届けるようになってきた。

確かに、と自分達も反省し開始日を決め、それに向けて新聞に公告を出し、チラシをポスティングしに行った。

しかし、集客は難しく、当日 授業の申し込みがあったのは一人のみ。

これにはX先生、相当ガッカリされ不快、怒りへと変わっていった。

「正直 僕 今凄く忙しいし、たった一人の為に時間取られるんだったら、その時間 寝たいし、僕 降りるわ。  それに、そんな一人から僕の講師料出てると思うと嫌やし、M先生 理論出来るし変わってもらって」と、去って行った。

この時、先生には大きなスポンサーがついて、数々の講演が入り出し忙しくなっていると、スポンサーに繋いだ女性から聞いた。

そうか、そんな状況だったら、講師料1講座1万円+交通費では、こちらにしたら大金でもX先生には "魅力的" なビジネスではなくなっていたのだろう。

困った時のM先生

困り果て、またまたM先生に話を持っていき、

「そうか、俺は1回は引き受けるけど、もう君達が講師をしたらどうや」

いや、そんな、まだまだ無理です

「何を言ってるんや、もう十分出来るやろ。  いつになったらGOサイン出すんや。  条件全部そろった頃は 今の君らやったら また高い条件つけるやろう。   そんなんやったら、いつまでたっても講師は出来ないで」

それでもM先生探し回って、講師A先生を見つけてくれた。

(このA先生の事は、回を別にして記する)

今、X先生は押しも押されもせぬ人気カウンセラーとなり予約も取りにくいようである。

立派なHP・多くのプログラム。

卒業生の中には有名なカウンセラーも少なくはない。

私自身、上述したような体験をしていなければ、おそらく受講していただろう。

それ位の魅力あるものに仕上がっている。

自身の強みを良く分かっており、SNSの活用も上手い。

何より、今のご自身が楽しくて仕方ない、目がキラキラしており、喋りも達者、見ている方も引き込まれていく。   ファンになってしまう。

売り込み下手、不器用、文明に弱く令和についていけない私は、「凄いなぁ」と唸るばかりである。

㊟   これは、あくまでも私にとっての事実であり真実である。

    X先生にはX先生の苛立ちゃ想いがあり、限界まで辛抱されていた。

    その閾値を超えてしまった、それだけの事に過ぎない。

    しかし、その現実は私達にとって痛過ぎ、辛かった。

    以降、私は受講生がたった一人でも、講師料が5千円しか出せない、そんな    カルチャーセンターでも引き受けさせてもらってきた。

担当の方が、お引き受けした時、電話の向こうで泣き崩れ、

「お礼を直接伝えに行きたい。   どこも引き受けてくれず、一人では講師は出来ないと言われ、乾先生も どうせダメだろうと諦めながら電話をした」

引き受けて良かった。

もう30年以上前の事であるが、今も私の心に深く刻み込まれている。

今だから話してみよう・①” に対して4件のコメントがあります。

  1. あいかわ よしみ より:

    事業を立ち上げるには利益追従、関わる人達への思い遣り、この両方が欠かせないと思いますが、カウンセラー養成講座やX先生は利益を優先にし、M先生と乾さんは心を優先してきた、と養成講座時代からTACの開講までを見守ってきた私はそう感じています。
    だから苦しい時、辛い時、話を聞いて欲しいのは乾さん、乾さんのお顔が浮かぶんです。
    自分に厳しく、慈愛に満ちた乾さんが、どの様な決断をされてリラクセリングルームを開校される事になったのか、そしてこの後何が起きていたのか‥?続きを楽しみにしています♪

    1. inui より:

      あいかわ よしみ様

      有難く、勿体ないコメント、ありがとうございます。
      返信が遅くなってしまい、申し訳ありません。

      文明に弱く、あいかわ様のコメントも、HPをお願いしておりますNOP様のワタクシ担当のS様から教えて頂き、分かった次第であります。
      S様、HPをお願いしてから、ずっと ずっと手取り足取り、何も分からないワタクシをずっと導いて下さっています。

      人生、誰と出逢うか、どこの業者を選ぶか、出会いと選択で人生の幸福度かなり変わってしまうと思います。

      あいかわ様に出会えた事、ワタクシにとって、どれほどの励みになっているか、その優しい笑顔、フワ〜っとしたお声、独占しているご家族が羨ましいです。

      続き、楽しみにしていて下さいね。

      オッチラ、オッチラ頑張って書いております。

      ずっと、読んで頂けるような内容を書いていくつもりですので、忌憚なき ご意見 頂戴出来ましたら、凄く 凄く 嬉しいです。

      因みに、ワタクシ、ヨーガをした後は感謝の「ありがとうございます」を お一人、お一人名前を挙げてお伝えしています。
      今朝も、あいかわ様、ありがとうとイメージしてその笑顔とお声、イメージで包まれておりました。

  2. 森本博子 より:

    先生の歴史と情熱が伝わってきました。
    紆余曲折を経て現在に至られておおられるのですね。

    そして、真っ直ぐで…
    邪念とか…濁りとか…私利私欲とか…
    そんなものが混じる余地が一切無い「水」の様な透明さも
    長年、先生にお世話になっているからこそ感じます。
    先生のお名前「真澄」を
    生き方が示して下さってます。
    唯一無二の存在です!

    1. inui より:

      森本博子様

      ブログを読んで頂き、本当に嬉しいです。
      ありがとうございます。

      これから、私の心理学の「歩み」を歴史を遡って記していこうと思っております。
      問題が沢山、次から次へと来てくれはーりまして、その度、"何で?"ってなってました。

      それらを隠す事なく記する事で、「今 困り果てている」、「何からしんどさを整理していいのか分からない」、「もう消えてしまいたい」 そんな想いを抱えている方の何かヒントになってもらえればと、ただ、願うばかりです。

      また、こうして、こんなに勿体ないコメントをして頂け、私にとっては「大切な宝」であり、エネルギーを注いでもらえました。
      しかし、褒め過ぎはアキマセン、アキマセン。

      ワタクシ、妬み・嫉み・嫉妬・傲慢・高慢・卑屈・の塊のような人間でございます。
      ただ、"心"を生業にする事で、過去、そのような自分を認めなかったのが、今は、そう、それが私なんだと理解出来るようになりました。

      心理学、やってて良かった、そんな事も、今後記していけたらと思っております。

      これからも、ご拝読頂けます事を深い所から願っております。

      ありがとうございました。

      〜心もっと自由に〜 乾 眞澄 リラクセリングルーム

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