私の、小さな小さな交渉事

「こんなん、水で洗ったら良いだけでしょ。   私がやってみましょか?」

何か 怒ってる?

ロッカーの扉を開け雑巾を取り出し、片手にトイレスリッパ・片手に雑巾を持ち、 "競歩" を思わせる速さで廊下を歩いて行く。

私が後をついて来るのが当たり前、と思ってか一切後ろを振り返らない。

多目的トイレをガーンと開け、水が入っているタンクにトイレスリッパを突っ込みバシャバシャ、雑巾で擦り洗いしている。

その荒々しさ。    なんか怒ってはーります? と尋ねたいほど。

「ほら、こうやったら取れるでしょう。   洗濯機で丸洗いとか、そこ迄してもらわなくても良いですから。  これだけでいいんで」

えっ、そんなんで良いの?   この1年(私が勤める以前を含めると8年)は何だったの?

会社の指示は・・・

「施設の備品、こちらの判断で勝手に洗濯機で洗うのは出来ないから、それは止めて。   気持ちは分かるけど、う~ん、スリッパの裏拭く位しか出来ないなぁ。」

「全部新しいのに変えてくれたらいいけど、税金から出ているから簡単に許可下りへんやろうしねぇ。」

との答えと指示。

しかし、スリッパ裏 拭いても拭いてもすぐ汚れ、トイレの床がモロモロの黒カスだらけになり、毎日 毎日非常に汚い。

辞めたH氏、現掃除スタッフのT氏、

「ここらの客は程度が低い。   自分が汚しておいて平気や。  スタッフも何もせーへん。」  文句を言い続けていた。

今年に入り、汚れ特にひどくなり、春からトイレの扉を開けるのさえ嫌になりかけていた。

何とかならないのだろうか

よし、やるか。

会社が遠慮するなら私が直接施設のスタッフと交渉するしかない。

「勝手な事をして」、と私が首を切られれば良いだけの事。

5月に入って4日目、問題のフロア担当になり、受付のスタッフに声をかけた。

「すみません」

中でパソコン業務をしていた女性スタッフ、スッと立ち上がり窓口に来てくれる。

「トイレのスリッパなんですが、汚れがひどくて」

「そうですね、ホントに汚れてますよね」

「裏、いつも拭いているんですが、追いつかなくて、汚れがつき難いクリーナーとか置いていらっしゃいませんか?」

「置いてないんですよね」

「床の黒いモロモロの泥のような汚れが、ここのところ酷くて」

「ああ、ほんとに汚いですもんね」

「もしよろしければ、当社の洗濯機で丸洗い させて頂いても大丈夫でしょうか?  そんな事したら、傷んでしまうでしょうか?」

で、最初に記した流れになった。

水につけてバシャバシャかなり荒っぽく洗っている。

「ほら、これで取れるでしょ!。  何も洗濯機でわざわざ洗わなくても、そんな事してもらわくても良いです!!」

バッサリ切り捨てるような口調。

何か怒ってはーります?   私、怒られてる?

怖いやん、怖いやん。

何を、どう伝えるか、言語の選び方、その人らしさがよく出る。

同時に、ウダウダ言うより、解決に向けての行動の早さ、仕事出来るな、そう感じざるを得なかった。

しかし、たったそれだけで良かったの?    そんな簡単な事で済む問題だったの?

「施設の備品だから、こちらとしては何も出来ない  余計な事はしないように」って、あれは何だったの?

「客の程度が低すぎる  きっとこんな汚すの、外人客やろ  前は ここまで酷くなかった    ここは客もスタッフもアホばっかりや」

そうボヤく事で、精神の安定を保っていた先輩方。

ボヤく、怒鳴りまくる、人を貶しまくる、その最強のH氏も居なくなった。

しかし、会社の意向は何も変わらない。  「気持ちは分かるけど」

現場に対する気持ちが、大人しく会社の指示に従えないと、上回ってしまった。

そして

余りに単純な解決法。

何と時間の無駄遣い、1年という勿体な過ぎる時間。

アホらし過ぎて。

今残った一人のT氏、小さな改革ではあるが、どんどん変わって行っている現況にストレス軽減され、「客の程度が低い」と口から洩れる回数がかなり減った。

「程度が低いという前に、こちらは どれだけの工夫をしてきました?」

の問いかけに対し、

「Hさんが、どうせやってもムダなだけや、そう言って何もさせてくれへんかったから」

そう言い返し続けていたT氏、今はやる気に満ちて、私にあれやこれやと「前は ここもたまに掃除していたから」と、1年以上手を付けていなかった場所を指示してくる。

かなりの強気である。

まあ、"やる気" になってくれているのは、取り合えず一歩前進か、と眺めてはいるが。

同時に、何か早とちりして小さい問題を起こすだろうな、その予感も少なからず、あるのではあるが。

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