T社長の話、記してきた。
もう既に疑問を感じの方もいらっしゃるだろう。
何でパートばっかり? 職人さんはどうなってるの?と。
おっしゃる通り。
私が勤めていた工場、辞めたY氏以外 社員さんは全て職人さんである。
彼らにとって社長は苦手な存在らしく、あまりお近づきになりたくないようだ。
社長は社長なりに気を使っていたみたいだが。
イベントで職人さんと出かける時は食事に誘ったり、希望する者には会社負担でフランスに修行に出したり、そんな形で労ってきたようだ。
しかし、日頃会話の交流がないと、受ける側には なかなか伝わらないのも現実なのだろう。 加えて、「職人気質」というものであろうか、群れたがらない。
で、「パートだけ」という形になった。
しかし、なあ、、、。 何でもそうかもしれない。
今から話す事も、どこにでもあるような事だろう。
いつしか私が特別扱いされていると見られ、それは 瞬く間に当たり前の事象になった。
ハッキリ口にする若い職人さんもいた。 「そら乾さん、社長の愛人やもん」
社長は気づいていないが、工場訪れた時 パート・職人の間を ”うん、うん” と頷きながら見て回り、私の所に来ると、肩に手をかけニッコリ 「乾クン、頼むで」
社長、アカンそんな事したら,誤解招く。
皆、じーっと見てるし。 ほら、やっぱり出たやん、愛人説。
構へん、言いたい奴には言わせておけ。 乾クン、どれだけ助けてくれてん。 俺、あの時 会社もうアカン、正直に思った。 乾クン一人やないか、会社の事思って頑張ってくれたん。
こんな片田舎に工場作った時、恐ろしいほど開けてないのうと馬鹿にしてたけど、こんなレンコン畑の大東市にキミみたいな子が一人でも おってくれた。 ここに工場作って正解やった。
古いベテランパートさん達、一斉に辞め連日深夜まで残って仕事をしていた。
それは社長の心を打ったらしく、そのような感謝の言葉を言ってもらった。
キミだけや、会社の事を思ってくれるのは。
いや、社長、私は別に会社の事なんて何も思っていない、こんなになるまで放っておいた社長の責任です。
私は、ただ これから結婚する二人の門出に引き出物のケーキがないなんて、そんな最初からケチをつけるような事、イヤなだけです。 私も式に出た時、引き出物のケーキすごく楽しみやし。 それが許されへんだけです。
ひいては、それが会社の為になってるんやないか。
いや、違う。 私は会社なんて どうでもいい。
かなり言い返した、私にとっての事実と真実。
しかし社長はそんな事より、社長が今味わっている現実の感動に熱くなっていた。 そして、社長の中で私は揺ぎ無い存在として位置づけられた。
それにしても、皆もずるい。
愛人や、と言いながらそれを利用する、断りもなしに。
クリスマスの計画表 「総責任者・乾」 と張り出されていた。
大きな行事・誰も責任を取りたくない。
乾なら社長も、あんまりきつい事言わへんやろ。 見え見えである。
何で私ですか? 聞く気さえ起らなかった。
社長、張り紙を見て 「おっ、乾クン そうか、頼むで」 ああ、社長、どこまで心 元気なの、、。
そして、私の中で、「そろそろ この工場も辞めないとな、」 クリスマスも無事終え、パートさん達も1つにまとまった、やる事やったし。 そんな想いが生まれだしていた。