T社長の話・⑦

T社長の話、記してきた。

もう既に疑問を感じの方もいらっしゃるだろう。

何でパートばっかり?  職人さんはどうなってるの?と。

おっしゃる通り。 

私が勤めていた工場、辞めたY氏以外 社員さんは全て職人さんである。

彼らにとって社長は苦手な存在らしく、あまりお近づきになりたくないようだ。

社長は社長なりに気を使っていたみたいだが。

イベントで職人さんと出かける時は食事に誘ったり、希望する者には会社負担でフランスに修行に出したり、そんな形で労ってきたようだ。

しかし、日頃会話の交流がないと、受ける側には なかなか伝わらないのも現実なのだろう。  加えて、「職人気質」というものであろうか、群れたがらない。

で、「パートだけ」という形になった。

しかし、なあ、、、。   何でもそうかもしれない。

今から話す事も、どこにでもあるような事だろう。

いつしか私が特別扱いされていると見られ、それは 瞬く間に当たり前の事象になった。

ハッキリ口にする若い職人さんもいた。  「そら乾さん、社長の愛人やもん」

社長は気づいていないが、工場訪れた時 パート・職人の間を ”うん、うん” と頷きながら見て回り、私の所に来ると、肩に手をかけニッコリ 「乾クン、頼むで」

社長、アカンそんな事したら,誤解招く。

皆、じーっと見てるし。   ほら、やっぱり出たやん、愛人説。

構へん、言いたい奴には言わせておけ。 乾クン、どれだけ助けてくれてん。 俺、あの時 会社もうアカン、正直に思った。   乾クン一人やないか、会社の事思って頑張ってくれたん。

こんな片田舎に工場作った時、恐ろしいほど開けてないのうと馬鹿にしてたけど、こんなレンコン畑の大東市にキミみたいな子が一人でも おってくれた。  ここに工場作って正解やった。

古いベテランパートさん達、一斉に辞め連日深夜まで残って仕事をしていた。

それは社長の心を打ったらしく、そのような感謝の言葉を言ってもらった。

キミだけや、会社の事を思ってくれるのは。

いや、社長、私は別に会社の事なんて何も思っていない、こんなになるまで放っておいた社長の責任です。

私は、ただ これから結婚する二人の門出に引き出物のケーキがないなんて、そんな最初からケチをつけるような事、イヤなだけです。  私も式に出た時、引き出物のケーキすごく楽しみやし。    それが許されへんだけです。

ひいては、それが会社の為になってるんやないか。

いや、違う。 私は会社なんて どうでもいい。   

かなり言い返した、私にとっての事実と真実。

しかし社長はそんな事より、社長が今味わっている現実の感動に熱くなっていた。 そして、社長の中で私は揺ぎ無い存在として位置づけられた。

それにしても、皆もずるい。 

愛人や、と言いながらそれを利用する、断りもなしに。

クリスマスの計画表 「総責任者・乾」 と張り出されていた。

大きな行事・誰も責任を取りたくない。

乾なら社長も、あんまりきつい事言わへんやろ。   見え見えである。

何で私ですか?  聞く気さえ起らなかった。

社長、張り紙を見て 「おっ、乾クン そうか、頼むで」   ああ、社長、どこまで心 元気なの、、。

そして、私の中で、「そろそろ この工場も辞めないとな、」 クリスマスも無事終え、パートさん達も1つにまとまった、やる事やったし。  そんな想いが生まれだしていた。

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