1.黒と白の狭間で・空海(くみ)

「で、お前は どっちなんだ」

「私?、、、 うーん、、、黒、かなぁ」

そうだろう、この女は黒と答えるだろう、分かっていた。

「そうじゃない?   私、黒じゃない?」

「うん、お前は黒だな」  その答えを期待している。

「いや、お前は黒と白の間だろ。   どちらにも成り切れない」

「えっ、   なぜ?」  

真っ直ぐに見つめてくる。

「じゃぁ、ここには見えないけど、灰色の中に私は居るってこと?」

「いや、そうじゃない。  お前は黒と白を跨いで立っている。  だから黒にも白にもなり切れない。  しかし、それは同時にどちらにも属している、という事でもある。   だから、黒と白の気持ちが何となく理解出来るんだ」

「何となく、な」 

言い終わろうとする瞬間、グラスの中で氷が琥珀に滑り落ちた。

「貴方は いつも何を見ているの?   どこにいるの?」

氷が自身の身体を溶かし、琥珀に僅かな刺激を与える。

溶け合う揺らめき、この (「無」の時)が愛おしい。  魅入られてしまう。

「貴方は、、、」空海(くみ)の声が俺を現実に連れ戻す。

だからと言って、この女は俺の時間を邪魔をするわけではない。

気分に合わせてピアノを奏でてくれる。

何も言わないが、その音色は俺の気分といつも合っている。

さり気なく引き始める。

俺を見て何かを感じるのか、それを見抜くのが {プロの力} というものなのか。

琥珀と共鳴する音の振動を、その心地良さを俺の胸に届けてくれれば俺はそれだけでいい。

鍵盤をすり抜ける空気振動が内臓を微かに震わせる。

この一時に酔う。

お前の背中が 寂しい と言っている。    私は居ないの? と。

それを感じている事が、存在している証である。

お前はいる。

しかし、それを伝えるのは、まだ「今」 ではない。

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