その男の言動は、関心を引くに十分であった。
「すまんですまん、そんなもん。 立ち退きさせて来い、お前らで。」
「今日、火つけて捕まって来い、7年間何しとってん、ふざけんな」
「損害賠償、個人で負え、当たり前じゃ」
2019年、暴言で有名になったその男、泉 明石市長。
切り取られた部分ばかり誇張され、連日テレビのワイドショーなどでその話題は大いに大輪の花を咲かせていた。
言葉が、荒っぽいだけで、何か変な事言っているとでもいうのか、叩く、叩く。
7年間、ほったらかしにしていた責任はどこへ消えたのか。
テープに録音し、世間に公表した人物は、全国に犯罪者のように晒された市長に対し己の恥辱に満ちた時を、それで払拭出来たのであろうか。
罵声を浴びさせられ、耐えていた、その事が余程悔しかったのだろう。
その者の、それまで生きてきた中での悔しさの頂点だったのかもしれない。
悔しさの頂点に立った時、見えた景色は ”憎しみ” 一色という事なのか。
どこかで、憎しみのバランスを取り戻したかったのか。 自己崩壊を防ぐ手段として。
その後の記者会見。
「報道されている私の発言については、全て事実です。 言い続けた記憶があります。」潔く認めていた。 答える時、頭をあげ 真っ直ぐ前を見て答えている眼は泳いでいなかった。
そこに、”覚悟を決めた” 目なるものを見た。 不器用な真っ直ぐさ。
なかなか面白い人物だな。
好かれるか、嫌われるか、ハッキリ別れるんじゃないだろうか。
当初、辞任はしないと言っていたが、その後辞める事を公表。
すぐに行われた市長選で圧勝。
報道陣の前で行われる勝利宣言というものなのか、その動画を見た時に私の心を射抜いたもの、それは若いお母さん達の応援が多いという事、子供を抱えた若い母親達が当選を喜び安堵している、その映像だった。
今まで、あまり目にした事がないような光景。
若母達が市長選に出てほしいと、泉氏に直接働きかけたという。
「市長がいるから、わざわざ明石市に引っ越しして来たのに。 明石で子供を産みたいのに」と。
それ程までに、若母達に支持された政治家がいただろうか。
「国の政治が、余りにも冷たい。 優しい社会を明石から。」 彼の口元から発せられた想い。
少子化を止めたいのなら、安心して産める環境を用意してあげるのは、大きな優しさではないだろうか。
彼が市長になって人口が増え出し、遂に30万人を超えたと発表された。
彼の想いのこもった明石市を見てみたい。
私の好奇心、6月7日、明石に身体を運ばせた。
良く晴れた、暑い日であった。
「一体 何をするんですか? なぜ、私なんですか?」
と、疑問を感じながら同行してくれたMちゃんを道連れに。
TACカウンセリングルーム
大阪・北浜の心理カウンセラー乾 より